多言語ページで、訳し方より先に決めること

制作ノート

翻訳の品質を決めるのは訳文の巧さではなく、固有名詞をどう書くかを先に決めてあるかどうかでした。

首里のガイドサイトには、日本語のほかに英語・繁体字・韓国語のページがあります。作ってみて分かったのは、多言語化でいちばん品質を左右するのは訳文の巧さではないということでした。効くのは、固有名詞の表記を先に決めてあるかどうかです。

表記が割れると、同じ場所だと分からなくなる

同じ施設が、ページによって違う表記で書かれていると、読者には別のものに見えます。地図で探すときも、検索するときも、表記が一致していないとたどり着けません。訳文が多少ぎこちないことより、表記が割れていることのほうが実害が大きいという判断をしました。

そこで、固有名詞の表記を1か所に集めた基準を作り、そこを唯一の正としました。新しい語が出てきたら、訳す前にまずここへ追記します。

決めたことの例

書籍でも同じ題材を扱っているため、サイト側で独自の決定をしないことにしました。同じ運営者の出すものが、本とサイトで違う表記になっていると、どちらが正しいのか読者に判断させることになります。

いちばん危なかったのは、揃えてはいけないもの

沖縄の地名には、同じ漢字でも固有名詞によって読みが違うものがあります。ある地名では一方の読み、別の地名では他方の読み、という具合です。誤字ではなく、それぞれが正しい読みです。

これは自動的な検査や機械的な一括置換にとって最も危険な形です。「表記ゆれ」に見えるからです。片方に揃えれば整合が取れたように見えて、実際には正しい地名を壊しています。

そこで、基準の文書に「これは表記ゆれではない。揃えないこと」と明記しました。決まりごとを書くだけでなく、間違えやすい方向に先回りして注意書きを置くという使い方です。

生成と監査を分ける

訳文の下書きは機械的に作れます。しかし、下書きが基準を守っているかどうかは、別の工程で見る必要があります。作る側と確かめる側を分けないと、同じ思い込みが両方に入ります。

監査でよく出るのは、訳の巧拙ではなく表記の不統一でした。基準を作ったのは、この監査の指摘を減らすためでもあります。指摘が減ったぶんだけ、人が見るべきところに時間を回せます。

直せないものは、直さずに申し送る

監査の過程で、別の工程が作った成果物に古い表記が残っていることに気づいた場面がありました。音声として書き出されているもので、こちら側から書き換えると、元の担当が持っている台本と食い違います。

このときは直さず、次にその工程が更新されるときに揃える、という申し送りとして記録に残しました。目についたものをその場で直すのは気持ちがよいのですが、担当の境界をまたいで直すと、どちらが正なのか分からなくなります。分業しているときは、直す権利がどこにあるかも決めておく必要がありました。

この記事の元

この記事は、「すいむいさんぽ」の多言語ページの制作で実際にやったことから書き起こしています。 方針そのものは運営方針にまとめています。

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